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薬局における患者情報の取り扱い留意点

薬局において患者様の個人情報を取り扱いするときに「個人情報保護法」が非常に重要だということは皆さんご存知かと思います。しかし具体的に何をどのように注意しなければならないのか、詳しく理解するのはなかなか難しいですよね。


しかし2023年1月から制度開始予定の電子処方箋に、4月からはオンライン資格認証も原則的義務化となりました。また新型コロナ感染症の流行などでオンライン服薬指導などのニーズも高まり、薬局業界には電子化の波が迫っています。


ということは、個人情報の取り扱いはこれまで以上に複雑になるということです。そこで今回は、あなたの調剤薬局主催オンラインセミナーにて中外合同法律事務所 薬事・健康関連グループ代表の赤羽根 秀宜先生より伺った、薬局における個人情報の取り扱い留意点についてご紹介したいと思います。

 

目次

 


個人情報保護法とは?


まず個人情報保護法の目的についてですが、文言の最後のところに「個人の権利利益を保護することを目的とする」という記載があります。これが一つのポイントです。個人の権利利益とは、ざっくり言うとプライバシーの保護ということで、明確には言っていませんがプライバシー権という感覚に近いと考えていただいて良いでしょう。


またその前に書いてある「有用性に配慮しつつ」というのも重要で、プライバシーに関わる情報は非常に有用なので、オンライン資格確認や電子処方箋など、情報を各医療機関の中で有効に共有しましょうということになっていますが、ただ、患者さんやその他一般の方の権利を保護する必要があるので、プライバシーを保護するための法律で守られているのです。



ではプライバシー権とは一体何なのでしょうか。

昭和39年の東京地裁の判決が初めて日本でプライバシー権について争われた判決だと言われていますが、その中で「生活をみだりに公開されない権利」だというふうに判断したと言われています。しかし、生活をみだりに公開されない権利を個人情報保護法が保護しているのかっていうと、何か少し違います。


なぜ違うのかというと、例えば皆さんの薬局で扱う何の薬を飲んでいるか、どのような治療を受けているのか、これが流出すると確かに生活をみだりに公開されるという風に言えるかもしれません。

しかし例えば電話番号や住所が公開される、もしくは公開されなくても、第三者に勝手に情報を提供されて、いきなり知らないところからダイレクトメールが来る、いきなり電話かかってきて営業をかけられる、このような話が昔は存在していました。


生活までみだりに公開されているかというと、電話番号や住所は「生活」ではないですよね。自分の情報ではあっても私生活ではありません。そうすると個人情報保護法が持っている権利が「生活をみだりに公開されない権利」ということになると、先述したような事案を対処しきれず、定義が少し狭くなるということになります。


プライバシー権=?

そこで、最近は「プライバシー権」=「自己情報コントロール権」という風に考えられ、そこを保護しているのだというのが個人情報保護法だと言われています。自己情報コントロール権なので、言葉の通り自分の情報を自由にコントロールできる権利なのです。


自分の電話番号や住所の情報をお薬の配送のためには提供します、でも勝手にA社からB社に情報を渡すことは承諾していないので、そういったことはやめてくださいと言うことができます。


薬局では患者情報を取り扱うときに、例えばこの情報をどこかと共有していいのかといった相談などもあります。よくあるのが保険会社から問い合わせたときに、それを答えていいのか、どこまで話していいのかと言ったときによく議論になりますが、そういったときには患者様ご自身の「自己情報コントロール権」を侵害していないかについて、今一度立ち止まって考えてみてください。


侵害してしまう可能性があるのであれば、例外規定がない限りは情報共有・公開ができないので、そういう意識で個人情報・患者情報の取り扱いを前提として考えていくのが非常に重要です。


個人情報保護に関しては、色々なガイドラインが出ています。迷ったときにはガイドラインなどを参考にしてみても良いでしょう。



個人情報の概念

薬局にはいろんな情報が集まってきます。オンライン資格確認や電子処方箋で処方箋が集まってくるときに、何を「個人情報」として情報を扱わなければならないのでしょうか。


個人情報にはふたつの種類があり、ひとつが従来型、もうひとつが個人識別符号というものです。


従来型は一般的にイメージされる、住所や氏名などの個人が特定できる情報です。そして前回の個人情報保護法の改正で個人識別符号というもの加わりました。


この個人識別符号の典型例はマイナンバーです。あとは指紋認証のデータなど、単体で見ただけでは、個人情報に該当しない、個人は特定できなさそうに見える情報ですが、実際はマイナンバーというのは特定できるところでは特定できてしまいます。そういった符号番号なども個人情報に該当することになりました。


ということは、薬局で扱う健康保険証番号というのはこれだけで個人情報に該当するため、万が一この番号「だけ」だとしても流出すると大変なことになります。


個人情報と個人データ

また、法律の中には、「個人情報」と「個人データ」という二つの内容があります。その中に「個人情報データベース等」という定義があり、個人情報データベースいうのは、個人情報を体系的にまとめて検索できるようにしたものを指します。薬局でも典型例は薬歴があります。


薬歴が、個人情報のデータベースという位置づけになるということです。紙の薬歴についても同様で、スムーズに検索できるように、あいうえお順になっていたり、生年月日順になっていたりすると思いますが、電子的に検索できなくても検索ができてまとまったものになれば、個人情報データベースになります。


データベースになると何が起こるかというと、法律上は個人“情報”だけどさらに個人“データ”が加わることになります。そうすると何が違うかというと、法律上の義務が重くなり、守らなければならない事柄が多くなるのです。


薬局で扱う情報というのは、ほぼそういうデータの塊で構成されているので、個人情報の他に個人データとしてもきちんと対応しなければならないことを理解する必要がありそうです。



要配慮個人情報

また「要配慮個人情報」という概念も出てきています。これは病歴などに関連して不当な差別や偏見などの不利益が生じないよう、取り扱いに注意を要する情報です。


つまり薬局において、調剤にかかる情報、調剤で得た情報というのは全てこれに該当すると思っておいて間違いないと思います。そもそも調剤を受けた、〇〇薬局で調剤を受けたということ事実自体も、要配慮個人情報になると言われているので、薬局で扱う情報というのは基本的に要配慮個人情報だというふうに思っていただければと思います。


ひとつひとつが似た概念ではあるので、薬局で扱う情報はすなわち全て個人情報という理解でも良いかと思いますが、その中でも要配慮個人情報というものがあり慎重に扱う必要があるというのはぜひ意識をしていただければと思います。


まとめ

ここまで、薬局における患者個人情報と取り扱いの留意点についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。薬局DXが推進され、今後ますますオンライン化が進むであろう薬局業界、薬局業務。


個人情報を有用に活用することで、さらなる健康推進や利便性の向上を目指すことができる一方で、情報を握る側は扱いに注意しなければなりません。


薬局・薬剤師になら、安心して情報が渡せる、話ができる、そんな信頼を損なわないよう、情報の管理や法令遵守を心がけましょう。


なお、あなたの調剤薬局では弁護士・薬剤師としてご活躍する赤羽根先生ご登壇のオンラインセミナーを定期開催しています。過去セミナーのアーカイブなども見ることができますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。


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