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電子処方箋導入に向け今準備すること

更新日:2022年9月9日

2023年1月にスタートする電子処方箋制度。

正式に義務化されるのは4月からということが先日、オンライン資格確認推進協議会と3師会、厚労省の合同説明会にて発表になりましたが、いずれにしてももう間もなく電子処方箋の制度運用が開始されます。今回はそんな電子処方箋に関して、何を準備しておけばよいのか、制度の概要をおさらいしながら解説していきたいと思います。

 

目次

 


電子処方箋制度の概要

概要に関してはもうご存じの方が多いかと思いますが、念のためおさらいしましょう。電子処方箋制度は、これまで紙で発行・やり取りしていた処方箋をオンラインで行う新たな仕組みです。医療機関と薬局間の処方箋のやり取りが効率化されるだけでなく、電子的に記録されたお薬のデータを活用し、患者自身のお薬の把握や健康増進への第一歩となることが期待されています。


骨太の方針でも発表されている通り、国としては今後より大きな医療情報の連携を考えているわけですが、今回の電子処方箋制度の導入は、オンライン資格確認の仕組みを基盤として、医療情報連携拡大に向けた第一歩となっています。


電子処方箋制度の構造は、「電子処方箋管理サービス」という、いわゆるセンターファイルのようなものがシステムの中心となり、各医療機関・薬局がこのセンターファイルにアクセスしてデータの照会・確認を行うことになっています。


令和4年7月25日 厚生労働省医薬・生活衛生局「そうだったのか、電子処方箋」より


この中でポイントになるのは、この仕組みを活用することによって、医療機関と薬局間での処方箋のやり取りの効率化できることと、重複投薬や併用禁忌がないかのチェックができるということです。


これは従来の処方箋制度にはなかった非常に大きなメリットです。本来であれば患者様にヒアリングを行ったり、電子お薬手帳を確認したりというマニュアル的な動きが必要になっていたところを、電子処方箋制度が開始されると、こういった確認作業がボタン一つでできるということになります。


電子処方箋の流れとポイント

次に実際の運用の流れについて見ていきましょう。

令和4年7月25日 厚生労働省医薬・生活衛生局「そうだったのか、電子処方箋」より


まず、医療機関が処方箋を発行する際に患者に顔認証付きのカードリーダーで顔認証を行ってもらいます。次に、電子処方箋を希望するか紙の処方箋を希望するかの選択を患者が行い、医療機関はその希望に合った処方箋を発行します。(下記図参照)


ここでのポイントは、「過去の診療・お薬情報の提供に同意しますか。この情報はあなたの診察や健康管理のために使用します」と問いかけられることです。


令和4年7月25日 厚生労働省医薬・生活衛生局「そうだったのか、電子処方箋」より


患者にこれを同意いただくことによって、特定健診や薬剤の情報を遡って確認ができるようになります。但しこれはマイナンバーカードでの受付時のみ可能となっているので、一般的な健康保険証ではできません。


医療機関または薬局の中では患者様のこれまでの状況を確認することができ、またその先も情報連携が可能となることによって、より正確な診断、より安全なお薬の処方ができるので医療機関・薬局・患者それぞれにメリットが大きい制度と言えるでしょう。


医療機関、ドクターの方では、電子カルテに処方内容を入力していきます。この際に処方箋管理サービスにデータの照会をかけることによって、重複投薬・併用禁忌のチェック結果が表示れさるようになっています。薬局が処方箋を受け付ける前の段階で、既に一度チェックされているので、過誤がより起きづらくなりますよね。


令和4年7月25日 厚生労働省医薬・生活衛生局「そうだったのか、電子処方箋」より


そして発行された電子処方箋には、HPKIカードを用いて医師が電子署名を行います。


処方箋に記載される内容に関しては、ほぼ紙の処方箋と変わりません。これは、電子処方箋はあくまでもオンライン上のシステムを使って運用するものなので、何か通信障害などのトラブルが起きた場合に、しっかりとその内容が目視で確認できるようにということで、処方内容が紙と同様に明記されるというのが一つの方向性となっています。

令和4年7月25日 厚生労働省医薬・生活衛生局「そうだったのか、電子処方箋」より


患者様は、マイナポータルで自身のお薬のデータを確認することができます。また電子版お薬手帳アプリなどを用いて引き換え番号と被保険者番号などを薬局に事前送付することによって処方箋の原本が事前に確認できるため、紙の処方箋を撮影してアプリ経由で画像を送付するというような手間が削減される点も大きなポイントです。


令和4年7月25日 厚生労働省医薬・生活衛生局「そうだったのか、電子処方箋」より


次は薬局です。患者様は医療機関での流れと同じく受付時にマイナンバーカードをカードリーダーに置いて顔認証を行い、紙の処方箋か電子処方箋のどちらを提出するか選択します。またこの部分においても「過去の診療・お薬情報の提供に同意しますか」という選択があり、ここに同意して頂くか否かが非常に重要となります。


この先の流れも医療機関とほぼ同様となり、薬局においても重複投薬そして併用禁忌のチェックができるようになっています。そして調剤後は、調剤内容を含む電子ファイルが「電子処方箋管理サービス」に送信され、これを毎回繰り返すことによって患者様の情報がどんどん蓄積され、データが安全に活用されていくというイメージです。


令和4年7月25日 厚生労働省医薬・生活衛生局「そうだったのか、電子処方箋」より


電子処方箋制度のメリット

では患者、医療機関、そして薬局に対してのメリットはどういったところにあるかをもう少し深堀してみましょう。


電子処方箋ではマイナンバーカードを健康保険証利用するということになるので、まず保険切れの状態、つまり失効がなくなるということです。保険切れの状態がなくなれば医療機関にとっても薬局にとっても支払機構からの取り損ねが防げるようになります。


健康保険証は時限付きで今後廃止していくという方針があります。希望がある場合は発行すると国は言っていますが、基本的には補助額も含めマイナンバーカードの健康保険証化を進めているので、やはり薬局としてもマイナンバーカード保険証への切り替えを推進していくべきというところが大きなポイントになってきます。


そしてもう一つ大事なことは、薬局で電子処方箋への対応ができる状態にするということは大前提で、この制度をいかに患者様、また医療機関に働きかけをしていくのかというところです。


いくら薬局が電子処方箋への備えをしっかり行ったところで、周りの医療機関が使っていなければ機器やシステム投資へのコストも手間暇も無駄になってしまいます。国が今後、この制度を推進していくと共に薬局・薬剤師の皆様からも周りの医療機関や患者様にしっかりと働きかけをするということがこの運用においては大切です。


うまく制度が普及し運用できるようになれば、薬局においてはメリットしかありません。先述した内容にもある通り、電子版お薬手帳アプリなどを用いて引換番号と被保険者番号を事前に薬局に送付できる、薬局からすれば要は処方箋が来るわけです。


これについては先日、電子処方箋についての協議会がありましたが、この電子版お薬手帳アプロ「など」という言葉がポイントで、協議会では電子お薬手帳アプリだけじゃないと駄目なのか?ということが議論になりました。


まずそもそも患者様にとっては、マイナポータルで全てお薬の情報が閲覧できるようになり、医療機関・薬局もデータの照会ができます。そうなれば目指すべきところは紙の処方箋とお薬手帳からの解放です。


そこを踏まえて、このアプリ「など」というところに対し一定の見解が出たのですが、電話であろうがFAXであろうが、メールやSNS、つまり何のツールであろうが、どういった形かで引換番号と被保険者番号を伝達することで、予約が可能となるという見解が出ました。


だとすると、オススメしたいのはやはりLINEです。既に全国9200万人の方が登録をされていて、日本においては5人に3.5人の方が使っています。患者様と薬局をLINEで繋いでおいて、電子処方箋がでたら引換番号と被保険者番号をLINEで送るだけで、そのまま処方箋予約ができるようになるのです。患者様にとってみると、非常に効率的で楽ですよね。


医療機関と薬局というところにおいては、これも先述した通り、患者様が過去のデータ提供に同意して頂ければ、患者様の特定検診と薬の情報を過去3年分のデータまでさかのぼって閲覧できます。


従来のような口頭での確認となると、患者様ご自身も記憶があやふやになっていたり、言い間違い、聞き間違いなども起こってしまいますが、データ上で正確な情報の共有ができるようになることは患者様も医療機関や薬局にも大きなメリットとなります。


さらに大きなメリットは、重複投薬や併用禁忌の把握、確認ができることです。処方内容に問題がないかを目視でも、システム上でも確認できるということは、薬局・医療機関だけでなく、実際に処方される患者様にとっても安全性・信頼度が増し大きなメリットになるのではないでしょうか。


医療機関と薬局間でのメリットを掘り下げてみると、医師も薬剤師も処方箋の内容を管理サービスで見ることができるので、疑義照会であったり問い合わせも減ってくることが想定されます。ドクターの診察中に電話をかけて疑義照会となると、双方ともに忙しかったりするので心理的負担、工数的負担も大きかったかと思いますが、これが物理的に解消されるようになるのです。


さらに薬局側のメリットとしてもう一つ大きいのは、レセコンの手入力への負担や、紙の管理、スペースの確保、この点に関する業務効率アップです。


レセコンへの手入力は誤りなども時に起きてしまうリスクがありますが、そういったものも防ぐことができ、ファイリングや資料の整理など様々な業務負担が軽くなります。薬局・薬剤師にとってかなり大きなメリットですよね。


電子処方箋への評価

評価についてはどうでしょうか。8月10日の中医協の発表にもありましたが、電子的保険医療情報活用加算は、調剤に関してはマイナンバー保険証を利用する場合は月に1回3点、マイナンバー保険証を利用しない場合は3月に1回1点でしたが、これが9月いっぱいで廃止されます。


それに対し10月からは、医療情報・システム基盤整備体制充実加算ということで、オンライン資格等によって情報を取得した場合、初診では4点、またオンライン資格確認等により情報を取得した場合、2点が加算されます。しっかりと加算に対しての評価も設定されています。


厚労省の見解

厚労省としてはどう考えているか。あなたの調剤薬局にて各資料やヒアリング結果からまとめてみたところ、これまでオンライン請求に関しても医療機関では導入が遅かったのですが、この電子処方箋でも同じことが起きていると言えます。


調剤後のデータであれば直近の過去薬剤情報は取れるので、薬局にはすぐに対応してほしいと当然厚労省は思っています。そして、それに応える形で薬局業界では厚労省の希望通り46%、5割を超える店舗が対応を進めていて、これからもさらに加速することが予想されます。しかし医療機関においては現状26%しか進んでいません。


薬局が今やるべきこと

だとすると、薬局として今何を取り組んでいくべきか。薬局における電子処方箋のメリットはかなり大きいわけなので、それを実現するためにもまずは自薬局周辺の医療機関に、どんどん電子処方箋の利用を仕向けることではないでしょうか。


1月から制度が開始され、さらに3月からは義務化される方向性の中で、今この期間で準備すべきことは、まずシステム面での準備。これは来年の3月までであれば補助金も高い補助率が適用され、有効に活用できます。そして、それとともに患者様や医療機関に対し電子処方箋を積極的に使ってもらえるよう働きかけていく。


ここが薬局としての今行うべき活動のポイントになるのではないかと思います。


薬局へのメリットが大きいとは言え、大前提としては国の政策にのっとって制度が導入されるわけですから、患者様にとってのメリット、

 

・マイナンバーカード・マイナ保険証を作ればマイナポイントがもらえる

・紙の処方箋、お薬手帳から解放される

・カンタンかつ楽に予約ができる

・正確な診断によって、正確なお薬を渡せることでより早く健康になって頂ける

 

こういった訴求ポイントを1人1人に伝えていくことが大切だと思います。


また医療機関においては、現状26%しか促進できていません。ということであれば、例えば患者様にとってのメリットを訴求するためのPOP掲示などを、薬局側からお手伝い・サポートすることなども効果的ではないでしょうか。


電子処方箋システムの利点を伝えた上でマイナンバーカード取得を推進し、マイナンバーカードを取得したら「門前の薬局では健保の紐付けができますよ」と言うアナウンスを行うことができれば、患者様の認知・マイナンバーカードの取得が進み、おのずと電子処方箋を利用する患者様の来局数も増えてくるでしょう。


もちろん医療機関との関係性などもありますし、簡単なことではありませんが、今、これは薬局にとって大きなチャンスです。集患、さらには患者様の囲い込みという意味においては、マイナンバーカード保険証を持ってもらうだけで、電子処方箋を使っていただけ集患にも結びつきます。自薬局の門前医療機関・ドクターにどうやって働きかけるのが良いかということを真剣かつ具体的に考える必要がある時期なのです。


まとめ

ここまで電子処方箋制度の概要と、今やるべきことについてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。


まずは電子処方箋に対応できるよう自薬局のシステム導入を進める。またそれと並行して、患者様へマイナンバーカードの取得や、門前医療機関に対して電子処方箋の利用を積極的に推進していく。これはマストで進めておいた方が良さそうです。


また、制度が開始されたら処方箋の引換番号と被保険者番号を送るだけで、そのまま処方箋予約ができるようになるので、今のうちに薬局の公式LINEを開設し(無料でできます!)、1人でも多くの患者様とLINEで繋がっておくことが、大切ではないでしょうか。


LINEの開設ってどうやるの?どうすれば多くの患者様とLINEで繋がれるの?こんな疑問があれば、あなたの調剤薬局でぜひサポートさせてください。


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